宝物は、祖母のレザーたち

レザー製品の良し悪しを見極めるためには、革のコバの始末や、ステッチなどをまず確認しなさいというのが、祖母の口癖でもありました。祖母は、ナイロン製やビニール、プラスチック製品などを、ほとんど身の回りに置かないような人でした。とにかく、レザーのものを良く好み、革財布、革バッグ、革のポーチ、革の手帳、革の筆入れなど、身の回りの私物には、レザーでハンドメイドされたようなものを集め、何かの折に買い替えをするような事はせず、手にしたものは一生モノとして大切に使うのだといったような気合の入ったモノとの付き合い方を常にしていました。そんな祖母の台所には、よけいなものはい一切、見当たらず、必要なものだけを大切に長く愛用するといった、頑なな姿勢が生活のシーンの随所に垣間見る事ができました。孫の私達、双子の姉妹の生活の風景と言えば、流行りのモノを追い掛けては、次のシーズンには、飽きてしまい、最先端の流行のモノでないと身に付けたくないといったような、実にわがままな物欲を奔放に周囲に当たり散らしていたので、父や母は、似かよった性格の瓜二つの双子の私達を、うざったく思えたかもしれませんが、いつもシーズンごとに、身の回りのモノを新調してくれる優しい両親でした。ですが、いつからか、年を重ね、双子の姉と思春期を迎えた頃に、祖母のモノを大切にする姿や生き方に、急速に引き付けられ、姉と祖母の部屋に忍び込んでは、レザーの風合いや、独特な香り、丁寧に手入れされた道具の1つ1つに見惚れては、いつの日かこんな女性になってみたいというような話しをしながら、多感な時期を祖母の部屋で過ごした思い出があります。今、思えば、父母が、私達のわがままを、許していた背景には、いつの日か、消費する物欲に飽きるだろうというような確固たる憶測があったのかもしれません。祖母の生き方に魅せられた私達は、祖母の愛用品を、奪い合っては、レザーを丹念に磨く術を競い合っていました。今では、そんな私達、姉妹にも、年頃の孫がなつくようになり、祖母から受け継いだアンティークと化したレザー仕様の私物の数々を、せがまれるような毎日です。祖母が愛した古き良きモノたちが、彼らにとっては、宝物のように瞳に映っているようです。